Ⅰ. 火花放電による電磁波の送受信の時代
—電磁波理論の夜明けと、それを彩る切手たち—
 
 通信技術の原点は、思いがけず私たちの耳に届く「ガリッ」「ジャー」という雑音だった。回路の接点が開閉する際に生じる火花放電は、単なる電気的副産物ではなく、やがて世界をつなぐ波となる。火花のキラメキに宿る見えざる力、それこそが電磁波であった。
 19世紀後半、この現象に挑んだ科学者たちがいた。マクスウェルが理論でその存在を予言し、ヘルツが実験で実証した。さらにブランリーのコヒーラ検波器やリーギの精密な電磁波実験、ポポフの海上伝搬、そしてマルコーニによる通信の商業化へと続く壮大な技術のリレー。これらはすべて、今日のラジオ放送、さらにはテレビへとつながる道を示していた。
 これらの足跡は、時に紙片に宿る。小さな記念切手やFDC(初日カバー)は、無線通信の一里塚を彩る歴史の証人である。世界各国、それぞれの国が自らの視点でこれらの科学者たちを讃えている。
 ポポフの生誕や海上伝搬実験、マルコーニの無線通信100周年、さらにはモナコが記念したエッフェル塔からの実験送信。火花放電から生まれた電磁波の旅路は、こうした記念の切手の中に今なお息づいている。
 私たちはここに、切手という小窓を通して、科学の黎明期を覗き見る。蒐集とは単なる趣味ではない。そこには、過去の情熱を未来へ運ぶ力が宿っている。火花に始まり、空を翔け、そして切手に刻まれた波の物語が、いま語られようとしている。

Ⅰ.火花放電による電磁波の送受信の時代

 「火花放電」は電流が流れている回路の電気接点(スイッチ等)をオン・オフする時に必ず発生する。
 この火花放電は、電気雑音としてラジオやテレビ等に妨害を与えるため、離れた場所にあるラジオ等に「ガリッ!,ジャー!」などの雑音として伝搬する。これは火花放電による電磁波が空間を伝わる事を示している。
 通信の当初は、この「火花放電」の発生・停止による電磁波を巧みに利用して信号の伝送が試みられた。


1873年 マクスウェル (James Clerk Maxwell、1831-1879)
 導体に電流が流れると周辺に電磁界が発生するマイケル・ファラデーによる電磁場理論をもとに、マクスウェルの方程式を導き電磁波の存在を理論的に予想した。
       (蒐集)無線の中心的な年100年記念切手、FDC(1991)
1888年 ヘルツ (Heinrich Rudolf Hertz、1857~1894年)
 マックスウェルの電磁方程式から実験で電磁波の存在を証明した。
(蒐集)無線の中心的な年100年記念切手、FDC(1992)
1890年 ブランリー (Édouard Eugène Désiré Branly、1844~1940年)
 金属粉末の整流現象(コヒーラ)を発見。当時の火花放電無線機に電磁波検出器として使用された。しかし、コヒーラ検波器は一度導通状態になると機械的に導通解除する必要があり、鉱石検波器(1904年頃)の発明で徐々に使用されなくなった。
(蒐集)無線の中心的な年100年記念切手、FDC(1993)
1894年 リーギ (Augusto Righi、1850-1920)
 電磁気学の研究において火花放電の送受信機で光学的(屈折・偏光)な実験等ヘルツ波の精密な実験を行った。
 ・マルコーニに技術的な助言を与えた。
(蒐集)アウグスト・リーギ生誕100周年記念切手(1950)
(蒐集)無線の中心的な年100年記念切手、FDC(1994) 
1895年 ポポフ (Александр Степанович Попов、1859-1906)
 火花放電による電磁波で初の海上伝搬(救命通信無線)の実験に成功
(蒐集_1)ポポフ生誕100年記念切手(1959ソビエト)
(蒐集_2)ポポフ生誕100年記念封筒(1959ソビエト)
(蒐集_3)ポポフ生誕100年記念封筒(1959)
(蒐集_4)発明家シリーズ・ポポフ生誕100年(1959チェコスロバキア(1966)
(蒐集_5)無線のパイオニア、ポポフ生誕100年記念(1960ブルガリア)
(蒐集_6)ポポフによる海上伝搬実験75周年記念(1970ソビエト)
(蒐集_7)ポポフ、生誕150周年記念FDC(2009ロシア)
(蒐集_8)ポポフ発明50年記念切手、(1945ソビエト)
(蒐集_9)ラジオ受信機の発明者アレクサンダー・ポポフ(1949ソビエト)
(蒐集_10)ポポフ無線電信発明60周年記念切手(1955ソビエト)
(蒐集_11)70周年を迎える無線の発明(1966ソビエト)
(蒐集_12)最初のラジオ受信機のデモンストレーション(1989ソビエト)
(蒐集_13)無線の100周年記念切手、FDC(1944ベネチアクラブ)
(蒐集_14)無線発明100年周年記念(1995ロシア)
(蒐集_15)ポポフの無線発明125年記念(2020ロシア)

「違法切手」
 (蒐集_16)素晴らしい発明と発見、記念切手(2014ガボン)
しかし、当時のロシアでは、ポポフのような偉人は国家の中央集権的な統制や計画経済の影響で埋没されていく。

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